近年、UV照射は、細胞のDNAに吸収されてCPDや6-4光産物などのDNA障害を引き起こすほかに、活性酸素などの酸化ストレス物質の強力な細胞内発生刺激であることが知られてきており、UVの細胞傷害作用、発癌性、老化原性は、DNAに対する直接的障害作用だけではなく、UV照射によって発生した活性酸素等の酸化ストレスに起因することがわかってきている。本研究では細胞が酸化ストレスに暴露されると活性化し、抗酸化・生体防御蛋白の転写を活性化する主要な経路であるNrf2-Keap1経路を持たないNrf2ノックアウトマウスを用いて、UVによる皮膚老化と酸化ストレスとの関連を解析することを目的としている。昨年度は、Nrf2ノックアウトマウス群とコントロールマウス群に1回200mJ/cm2のUVBを週3回X4ヶ月間照射し、長期UVB照射による皮膚のシワ形成を肉眼、レプリカ、病理組織について比較検討したが、本年度は、同じくUVBを繰り返し長期照射したNrf2ノックアウトマウス群とコントロールマウス群で、光老化において蓄積することが知られているglycosaminoglycan(GAG)の蓄積の程度を病理組織学的に比較検討した。コロイド鉄染色で染色し、コントロールマウス群と比較した結果、Nrf2ノックアウトマウス群では有意に表皮直下にGAGの沈着が認められた。さらに、表皮はNrf2ノックアウトマウス群では、コントロールマウス群の2倍以上に肥厚していた。表皮肥厚も光老化の特徴の一つであることから、これらの結果は、Nrf2ノックアウトマウスでは光老化が促進しており、Nrf2が長期UVB照射による酸化ストレスを消去して光老化を防いでいることを強く示唆すると考えられた。
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