近年、UV照射は、細胞のDNAに吸収されてCPDや6-4光産物などのDNA障害を引き起こすほかに、活性酸素などの酸化ストレス物質の強力な細胞内発生刺激であることが知られてきており、UVの細胞傷害作用、発癌性、老化原性は、DNAに対する直接的障害作用だけではなく、UV照射によって発生した活性酸素等の酸化ストレスに起因することがわかってきている。本研究では細胞が酸化ストレスに暴露されると活性化し、抗酸化・生体防御蛋白の転写を活性化する主要な経路であるNrf2-Keap1経路を持たないNrf2ノックアウトマウスを用いて、UVによる皮膚老化と酸化ストレスとの関連を解析することを目的としている。平成23年度は、皮膚の紫外線長期照射によるNrf2ノックアウトマウスの照射皮膚のシワ・たるみの形成を評価した。野生型とNrf2ノックアウトマウスの剃毛背部皮膚に対して少量(100mJ/cm^2)長期(36週)のUVB反復照射を行い、光老化により形成される深いシワを皮膚レプリカ像や画像解析により比較した。その結果、Nrf2ノックアウトマウスでは野生型に比べて光老化に特徴的な深いシワが有意に多く形成されていた。さらに、キュートメーターにより照射皮膚の粘弾性を定量的に評価した。その結果、皮膚の弾性を示すUf値、粘弾性を示すUr/Uf値ともに低下した。これらの結果より、Nrf2ノックアウトマウスでは、深いシワ形成や皮膚粘弾性の低下などの皮膚老化を示す徴候が亢進していることが明らかとなり、すなわちNrf2は紫外線長期照射による光老化を抑制していることが示された。
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