前年度までの動物実験により、ICOS-ICOSLのシグナル経路が、強皮症の病態における炎症や線維化の誘導に重要な役割を有することが示唆された。これらの結果がヒトの強皮症の病態に矛盾しないかどうかを確認するために、本年度は強皮症患者におけるICOS、ICOSLの発現とその意義に関する検討を行った。 免疫組織学的な検討により、発症早期で皮膚硬化の進行時期にある強皮症患者の皮膚病変部組織では、ICOS発現T細胞やICOSLを発現するマクロファージの浸潤が増加していた。また、強皮症患者の末梢血のT細胞におけるICOSの発現レベル、マクロファージやB細胞上のICOSLの発現レベルについて、フローサイトメトリーで検討した。ICOSの発現は、発症早期の強皮症重症例で、健常人に比べて有意に増加していた。一方、ICOSLの発現は、強皮症患者と健常人の間で有意な差がみられなかった。さらに、強皮症患者から採取した末梢血T細胞に発現するICOSを、in vitroで抗体を用いて共刺激した際に、炎症や線維化に関与するサイトカインの産生が、健常人由来のT細胞に比べて増強していた。そして、血清中の可溶性ICOSが強皮症患者で健常人より顕著に増加しており、病気の重症度や活動性と相関することが明らかとなった。これらの結果から、ICOSのシグナル増強が、強皮症の特に発症早期の進行に関与している可能性が示唆された。また、血清中の可溶性ICOSは強皮症の病勢や重症度の指標となりうるものと思われた。
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