本研究の対象疾患である遺伝性対側性色素異常症(DSH)は、ADAR1遺伝子が原因遺伝子であることが明らかになり、その後、とくにp150 isoformが本疾患に関係しているということが、本疾患患者の遺伝子診断による遺伝子変異データの集積より明らかになっている。また、ADAR1ノックアウト(KO)マウスは致死的であるとすでに報告がある。そのため、本研究ではADAR1 p150特異的KOマウスの表現型の検討を行ったがヘテロマウスにはDSHに類似した表現型は認めなかった。本疾患の表現型が得られやすいような試みとして、ADAR1 p150特異的KOヘテロマウスとK14-SCFトランスジェニックマウスを交配して、メラノサイトが表皮基底層に分布するようにした遺伝子改変マウスを用いて検討したが、形態学的には明らかな表現型の差異は認めなかった。そこで本年度は、この遺伝子改変マウスについてさらなる検討を計画した。まず、胎生期から出生後までの経時的な表現型の検討を行い、さらに病理組織学的な検討を行う。さらにp150 isoformの誘導による表現型の出現の有無について検討を行う。これまで、これらについて実験を進めてきたが、まだ結論が出ていない。研究期間は終了してしまったが今後も継続して本課題について検討していきたい。この研究と平行して本疾患患者の遺伝子診断を行い、本研究期間内に8つの新規変異を明らかにし、それらを学術誌に報告した。これによって更なる本疾患の解明につなげていきたい。
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