申請者は、表皮ケラチノサイトに発現するアクアポリン3(AQP3)の機能について研究を続けている。これまでに、AQP3欠損(AQP3-KO)マウスでは、化学発癌マウスモデルにおいて腫瘍が形成されないこと、創傷モデルで治癒が遅延すること、を見出した。この原因として、AQP3がケラチノサイトの増殖および遊走に関与していることを明らかにしてきた。本研究では、ケラチノサイトの過増殖を伴う皮膚疾患(腫瘍形成、アトピー性皮膚炎、乾癬など)へのAQP3の関与と、その作用機序の解明を目的としている。 平成21年度までに、AQP3-KOヘアレスマウスを用い、卵白アルブミン(OVA)投与およびハプテン連続塗布によるアトピー性皮膚炎(AD)マウスモデルでは、AQP3欠損により、AD発症が抑制されることを見出した。平成22年度は、AQP3のAD発症への関与メカニズムを詳細に検討したところ、(1)AD発症により増加する皮膚のTh2系サイトカイン/CCL17が、表皮ケラチノサイト増殖を増加させる、(2)CCL17は、ケラチノサイトのAQP3発現を増加させる、(3)AQP3-cDNA遺伝子導入によりAQP3を過剰発現したケラチノサイトは、細胞増殖マーカーの増加をともない、増殖亢進する、ことを明らかにした。これらの結果から、AD発症過程では、Th2系サイトカインを介してAQP3発現が増加し、ケラチノサイトの増殖を調節することで、AD発症に関与することが示唆された。 また、AQP3過剰発現トランスジェニック(AQP3-Tg)マウスの作成にも着手した。ヒト組織からAQP3-cDNAを精製した後、発現プラスミドを構築し、制限酵素処理によりAQP3-DNA断片を調製した。AQP3-Tgマウスの作出を継続中である。
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