申請者は、表皮ケラチノサイトに発現するアクアボリン3(AQP3)の機能について研究を継続している。これまでに、AQpa欠損(AQP3-KO)マウスでは、化学発癌マウスモデルにおいて腫瘍が形成されないこと、創傷モデルで治癒が遅延すること、を見出した。この原因として、AQP3がケラチノサイトの増殖および遊走に関与していることを明らかにしてきた。 本研究提案は、ケラチノサイトの増殖および遊走が関与する皮膚疾患(腫瘍形成、アトピー性皮膚炎、乾癬など)におけるAQP3の役割と、その作用機序の解明を目的としている。平成22年度までに、AQP3-KOマウスを用いたアトピー性皮膚炎(AD)モデルにおいて、AQP3欠損により、AD発症が抑制されることを見出した。AD発症過程では、Th2系サイトカインを介してAQP3発現が増加し、ケラチノサイトの増殖を調節することで、AD発症に関与することを示唆した。 平成23年度は、腫瘍形成、ADおよび乾癬では、AQP3の過剰発現がケラチノサイトの過増殖を引き起こすことで病態形成に寄与しているという仮説を検証すべく、昨年度から着手しているAQP3過剰発現トランスジェニック(AQP3-Tg)マウスの作成を継続実施した。 一方、ハプテン誘発接触皮膚炎(CHS)モデルを、野生型およびAQP3-KOマウスで比較したところ、AQP3-KOでは、野生型と比較して、CHSが抑制されることを見出した。CHS誘発には、ケラチノサイトのほか、T細胞が主に関与している。そこで、T細胞のAdoptive transfer、およびBone Marrow移植マウスを用いCHSを比較したところ、ケラチノサイトよりT細胞に発現するAQP3が、AQP3-KOにおけるCHS抑制に関与していることを明らかにした(現在論文投稿中)。
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