研究概要 |
線維芽細胞における上皮-間葉移行機序と皮膚線維化の関連性をin vitroで検討するため,正常マウスより線維芽細胞を採取,培養し,SIP1 siRNAを用いてSIP1発現を低下させた。SIP1ノックダウン線維芽細胞では,I型およびIII型コラーゲンmRNA発現量の低下を認めた。次に,間葉系細胞に発現するPrx1遺伝子をプロモーターとするCreノックアウトマウスと,SIP1遺伝子にloxPを組み込んだマウスを交配させ,Cre/loxPシステムを利用した間葉系特異的SIP1ノックアウトマウスを作製した。このマウスより皮膚線維芽細胞を採取,培養し,I型およびIII型コラーゲンmRNAの発現量を測定した。その結果,in vitroで得られた結果と同様にI型およびIII型コラーゲンmRNAの発現量は低下しており,皮膚線維化におけるSIP1の関連性が示唆された。また,E-カドヘリン,N-カドヘリン,ビメンチンのmRNA発現に関しても検討を行ったが,E-カドヘリンに関しては線維芽細胞での発現は検出域に達しておらず,他に関してもSIP1ノックアウト線維芽細胞と通常線維芽細胞との間に有意な差を見出し得なかった。次に培養線維芽細胞にTGF-βを添加し,その線維化作用について検討を行った。TGF-β刺激に伴うCTGF mRNA発現に関しては,SIP1ノックアウトマウス線維芽細胞においても通常マウス線維芽細胞とほぼ同等な増加を認めたが,コラーゲンmRNAに関してはコントロール実験においても有意な変化を認めず,条件設定に再検討が必要である。また今回作成したSIP1ノックアウトマウスでは,Prx1遺伝子の発現部位に一致して,皮膚の菲薄化だけではなく脱毛や歯牙形成に異常を認めており,これらの原因に関しても検討中である。
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