1) ECM1遺伝子ノックアウトマウスの作製について:疾患モデルマウスの作製 平成22年3月までを目標に、ECM1単独遺伝子変異で生じる常染色体劣性遺伝病の「皮膚粘膜ヒアリノーシス(LP)」疾患モデルマウスを樹立する計画に着手していたが、(1)特定の遺伝子内コード領域(エクソン)のみを取り除くホモ接合体ECM1欠損マウスは全例が胎生致死に陥ること、(2)ECM1遺伝子を限定した条件下で発現制御するシステム(コンディショナル・ノックアウト)を用いた手法でも、当初予想された致死回避が得られなかった。これらの原因により、約5ヶ月の研究計画遅延が避けられなかったため、更なる研究機関ならびに補助金運用期間の延長を申請し、了承された。その後は、更にECM1遺伝子内で標的とする領域の見直し・再設定を検討した結果を反映する新規ノックアウトベクターを構築することに専念した。種々の改変ベクターと培養細胞を用いた小スケールでのECM1遺伝子ノックアウトの生物学的効率を検討することに着手した。 2) ECM1蛋白を標的とする硬化性萎縮性苔癬患者IgGの免疫反応について 上記と並行して既存の大腸菌発現から、より蛋白自体の微細な修飾“conformational epitope”が保存され、真核生物の生体内に近い状態の抗原性を保持していると考えられるバキュロウイルスによるリコンビナント蛋白発現システムを導入した。現在、カイコを用いた新規の蛋白発現系を構築し、その発現効率と回収された蛋白が保持する生物学的特性を評価しながら、大量培養への移行を計画中である。
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