近年美容皮膚科領域において光線機器を用いた皮膚アンチエイジング治療の進歩は著しいが、その医学的エビデンスは手技のみが先行して基礎データについてはまだまだ乏しいのが現状である。今回の研究目的は主としてDNA修復という観点から、光線を用いるアンチエイジング治療に関する医学的・科学的エビデンスを得ることである。 研究代表者はこれまでレポータープラスミド(ルシフェラーゼ発現ベクター]の宿主細胞回復能を指標にして光線(赤、黄、青色LED IPL疑似光源)照射による紫外線性DNA損傷の修復能、酸化的DNA損傷の修復能、細胞増殖能、ピアルロン酸産生能、メラニン産生抑制能などの定量的変化を種々の正常ヒト皮膚由来培養線維芽細胞、ヒト皮膚3次元モデルを用いて網羅的に解析し、特にLED照射に皮膚の抗老化作用がある可能性を示唆する所見を得た。今年度は計10種類以上のヒト細胞株を用いて得られたデータの再現性を高め、また分子機構の解明に着手するためのプレリミナリー研究としてLED照射で最もアンチエイジング作用が生じる至適条件を見出した。その結果、赤、黄、青色すべてのLEDが酸化的DNA損傷の細胞修復能、紫外線性DNA損傷の修復能を高め、また赤色、青色LEDはともに細胞増殖能亢進作用、ヒアルロン酸産生亢進作用、メラニン産生抑制作用を持つことが判明した。これらの結果は特に青色、赤色LEDがシミ・シワ治療に有望であることを示唆する。今後はDNA修復に関連する遺伝子のリアルタイムPCR解析を実施するためのプローブ、プライマー作製など最近ようやく着手したこれらの分子機構の解明を早急に行い、将来の皮膚アンチエイジング(シワ・シミ治療)治療の臨床応用につなげていきたい。
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