精神疾患簡易構造化面接(MINI)によるDSM-IV診断を満たすパニック障害患者および健常対照者に対して文書での説明による同意を得て、心理検査および採血を実施した。心理検査としてWAIS-R短縮版(知識、絵画完成、数唱の3項目)、JART(Japanese Adult Reading Test)、人格検査NEO-PI-R(Revised NEO Personality Inventory)、不安特性検査STAI(State-Trait Anxiety Inventory)、不安感受性尺度ASI(Anxiety Sensitivity Index)、SDS:自己評価式抑うつ性尺度SDSなどを施行した。パニック障害における広場恐怖やうつ病の合併、性差に関する各種心理検査や発症年齢などの相違点を検討した。NEO-PI-Rによる人格検査の結果、男性においては広場恐怖の合併している場合は合併していない場合に比較して有意に発症年齢が低く、性格傾向で大きな差を認めた。また女性ではうつ病の合併の有無で大きな差異を認めた。複数のまた遺伝子多型についてその相違点を検討した。NEO-PI-Rにおける開放性の因子についてSigma1受容体Gln2Pro多型に関してPro Carriers(Gln/ProおよびPro/Pro)ではGln/Gln多型に比して有意に低値を示したが、神経症傾向をはじめその他の因子において有意な差異は認められなかった。WAIS-R短縮版検査の結果、COMTVal158Met多型、MAOAuVNTR多型では各多型間で相違は認められなかったが、Sigma1受容体Gln2Pro多型に関して、一元配置分散分析により「知識」の項目で有意差が認められた。特に男性患者群において「知識」、「絵画完成」、「推定IQ」に関してGln/Gln多型の方がPro Carriersに比して有意に高い値を示した。JARTでは多型間の差異は顕著ではなく、知能検査としてのWAIS-Rが遺伝子多型との関連について中間表現型の一つとなりえる可能性が示された。
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