ddY系マウスを交配し、産仔を得た。雄産仔を生後3週で離乳し、隔離飼育または集団飼育を開始した。隔離飼育開始前、隔離飼育開始後1週、3週、5週において、我々が研究開発した不快刺激応答計測システム(Aversive Response Meter:ARM:室町機械株式会社に依頼して製作)を用いて、機械的接触刺激に対する応答行動(蹴り行動と噛み行動)を定量的に計測した。隔離後1週において、隔離動物は集団飼育対照群マウスに比較して、明瞭に刺激棒に対する蹴り行動および噛み行動が増強した。隔離後3週および5週では対照群に比較して有意に両応答行動が増強し、さらに、隔離期間中の有意な時間依存的行動量の増大が認められた。隔離飼育動物を集団に戻した試験では、集団飼育開始後1週において両応答行動が有意に減少し、さらに2週目には対照群マウスとの有意差が消失した。10週間以上の長期隔離飼育を行ったマウスを4日ごとに1ヶ月間計測を行った試験では、両応答行動において、計測期間中の有意な計測値増減は観察されなかった。4週間以上の長期隔離飼育を行った慢性ストレス負荷動物は、統合失調症モデルおよびうつ病モデルとされ、抗精神病薬および抗うつ薬の評価試験に使用されている。本研究の結果は、ARMを用いて動物の蹴り行動と噛み行動を定量的に評価することにより、統合失調症およびうつ病のプレスクリーニングが可能であること、また、ストレス症状の進行または寛解を定量的に評価できることが示唆された。さらに、本試験法は、同一個体を用いた長期間のストレス症状の追跡評価に有効であることが示された。隔離飼育マウスに向精神薬を投与した試験では、両応答行動量の明瞭な変化が検出された。このことから、ARMを用いた行動評価は向精神薬評価にも応用できることが示唆された。
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