研究概要 |
本研究では機械刺激応答計測システム(Touch Response Meter : TRM:室町機械)の試作機を作製し、これを用いてマウスの「接触刺激逃避行動(蹴飛ばし行動)」および「対物攻撃行動(噛みつき行動)」を計測した。痛みを伴わない接触刺激は、正常なマウスでは無視されることが多いが、精神疾患モデル動物など易怒性(irritability)を有する動物では過敏な応答行動を起こすことが多い。本研究では、接触刺激逃避行動と対物攻撃行動を定量的に計測することにより動物のirritabilityを評価するための評価基準を確立する試みを行った。 本研究では、うつ病モデルまたは統合失調症モデルとされている長期隔離飼育動物を使用し、ストレス症状の進行または治癒過程における接触刺激逃避行動および対物攻撃行動を調査した。両行動は、隔離期間の長さに連動して増強し、ストレス解除によって急激に減弱した。このことから、両行動を指標とすることにより、動物のirritabilityを行動学的に半定量的に評価し得ることが示された。 これまでの私たちの研究により、接触刺激逃避行動および対物攻撃行動には脳内のドパミンやセロトニンのようなモノアミンが関係することが推察されている。本研究では、セロトニン1A受容体アゴニストであるブスピロンを隔離飼育動物に投与し、その影響をTRM法およびレジデント・イントルーダー試験法を用いて調査した。ブスピロン(0,2.5,5.0,10.0mg/kg)投与後、3つの行動はいずれも用量依存的に減弱した。本実験から、鬱病モデルマウスまたは統合失調症モデルマウスに伴うirritabilityはセロトニンに関係する行動異常である可能性が示唆された。 本研究で作製したTRMは特許登録された(特許4858996号)。
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