研究課題
「ありふれた疾患」の遺伝子レベルでの発症基盤として"multiple rare variants-common disease"仮説が現在注目されている。最近ヒト遺伝子上には多くのコピー数変異(CNV)やコピー数多型(CNP)が存在することがわかり、稀なCNVと精神疾患との関連が注目されている。すなわちmultiple rare variantsの検討には、ゲノムレベルでのリシークエンシング研究に加え、詳細なCNV解析が必要と考えられる。有棘赤血球舞踏病責任遺伝子であるVPS13A遺伝子、McLeod症候群責任遺伝子であるXK遺伝子に関して気分障害や統合失調症患者についてロングレンジPCR法とTaqman probeを用いたリアルタイムPCR方によってCopy Number Variant (CNV)解析を行ったところ,気分障害患者一名がVPS13A遺伝子上に有棘赤血球舞踏病疾患変異であるexon 60-61欠失変異をヘテロ接合性にもつことを見出した。またCNV以外にも患者群にのみ存在する機能変化を来す可能性があるrare variantsを認めた。今年度は検体数を増やして解析を行ったが、健常群にはそのような疾患変異や機能変化を来す可能性を持つvariantは見いだせなかった。これらから神経有棘赤血球症関連遺伝子は、気分障害及び統合失調症の病因に関与している可能性があり、論文報告を行った。また、全長VPS13A遺伝子を過剰発現したHEK293細胞株を用いて、VPS13A遺伝子産物choreinと結合し相互作用するタンパク質を同定するために、抗chorein抗体を用いた免疫沈降を行い、得られたタンパク質をSDS-PAGE後、銀染色もしくはCBB染色し質量分析を行い、chorein結合候補タンパク質としていくつかの細胞骨格系のタンパク質を同定し、choreinは細胞骨格と関連することが推測された。今後、それら細胞骨格系のタンパク質と病態との関連をマウスモデルなどを用いて解析する予定である。
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