「ありふれた疾患」の遺伝子レベルでの発症基盤として"multiple rare variants-common disease"仮説が現在注目されている。最近ヒト遺伝子上には多くのコピー数変異(CNV)やコピー数多型(CNP)が存在することがわかり、稀なCNVと精神疾患との関連が注目されている。前年度に気分障害や統合失調症患者について有棘赤血球舞踏病(ChAc)責任遺伝子であるVPS13A遺伝子上に患者群にのみ存在するCNVや機能変化を来す可能性があるrare variantsを認めた。変異分布を調査するためChAc患者についてVPS13A遺伝子変異解析を行い、日本人に頻度高く存在する病的変異の分布を明らかにした。また、赤血球膜分画から抽出したタンパク質を用いてchoreinと結合し相互作用するタンパク質を同定するために、抗chorein抗体を用いた免疫沈降を行い、得られたタンパク質をSDS-PAGE後、銀染色し質量分析を行った。その結果、chorein結合候補タンパク質としていくつかの細胞骨格系のタンパク質が同定された。HEK293細胞を用いてVPS13Aの遺伝子産物であるchoreinの安定発現細胞株を樹立し、chorein安定発現細胞株から抽出したタンパク質に対しても同様に免疫沈降-質量分析を行い同じ細胞骨格系のタンパク質が落ちてくる事を確認した。また同定されたタンパク質の抗体を用いてchorein安定発現細胞株から抽出したタンパク質に対して免疫沈降を行いchoreinが落ちてくる事も確認した。また免疫蛍光染色によりchoreinと共在を確認でき、choreinは細胞骨格系の分子と関わっており、それらの機能が破綻することによりChAcや精神疾患が引き起こされる可能性を示唆する結果を得た。
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