研究課題/領域番号 |
21591498
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
北川 信樹 北海道大学, 大学病院, 助教 (80312362)
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研究分担者 |
井上 猛 北海道大学, 大学病院, 講師 (70250438)
賀古 勇輝 北海道大学, 大学病院, 助教 (70374444)
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キーワード | うつ病 / リハビリテーション / 認知機能 / 復職支援 / 集団認知行動療法 / 作業療法 |
研究概要 |
うつ病患者の急激な増加に伴い、円滑な復職を支援することが、うつ病臨床においても社会的にも強く要請されている。そのため、いわゆるリワークといわれる取り組みが、いくつかの施設で実践され始めているが、そのプログラムは標準化されておらず、各施設で試行錯誤されているのが現状である。また、こうしたリハビリテーションの効果に関する実証的研究はこれまでほとんどない。そこで、われわれは、うつ病患者に対して多職種チームによる12週間の復職支援プログラムを実施し、その有効性について検討した。プログラムは、復職準備性の改善と、復職可能性の評価、および再発予防を目的とし、作業療法と集団認知行動療法で構成されている。プログラム前後に様々な質問紙票やいくつかの検査を施行し、その変化を検討するとともにその臨床的転帰を調査した。これまでに延べ32例(男性:女性=26:6)のうつ病患者がプログラムに参加し、うち30例が完遂した。参加者の平均年齢は39.8±8.4歳で、ハミルトン抑うつ尺度(17項目)の平均は治療前5.7±3.5点であった。 プログラムを終了し追跡中の28例のうち20名(71%)は復職を果たしたが、そのうち再発をみたのは6名であった(復職後0~18ヶ月)。治療前後で抑うつ症状(BDI)は有意に低下し、非機能的認知、自覚的な心理社会機能においても有意な改善を認めた。また、治療前に認知機能の異常が多くの患者で認められたが、その多くは治療後に一定の改善(効果量d=0.41)をみていた。特に、言語記憶や実行機能などの領野において改善が得られていた。これらから、うつ病のための復職支援プログラムが、社会的転帰の改善のみならず、再発予防、認知リハビリテーションに有効であることが示唆された。さらに、復職準備性を客観的に測定するのに神経心理学的認知機能検査が有用なツールとなる可能性が考えられた。今後は、復職転帰の予測因子や職場側との連携のあり方に関する研究がさらに必要と考えられる。
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