研究概要 |
BF-227は老人班を検出する、本邦で工藤らにより開発されたアミロイドPETプローブであり、アルツハイマー病(AD)早期診断に有用である.AD早期における大脳のアミロイド沈着、大脳糖代謝及び萎縮の程度と認知機能との関連について経年的に検討した.対象は、control(健常高齢者)12名,軽度認知障害(MCI)13名,AD15名.全例で最低2年間追跡(27.7±2.2ヵ月;25-30ヵ月)し、MCIは、AD進行例をconverter(7例)、非進行例をnon-converter群(6例)に分類した.これらについてAD、MCIの予後予測におけるBF227,FDG-PET及び大脳海馬傍回萎縮、大脳灰白質萎縮評価法としてMRI解析:MRI-VBM(MRI-voxel-based morphometry)及びVSRADの比較検討を行った.ROC解析で、AD早期診断においてBF-227-PETはFDG-PET及びMRI解析より診断感度、特異度共に優れていた.AD,MCI及び健常人の全群を対象にした解析では、BF-227集積量の程度は、大脳糖代謝低下の程度と負の相関を認めたが、AD及びMCI converterに限定した解析では、大脳糖代謝低下とBF-227集積量の程度には有意な相関を認めなかった.MMSEスコアは、BF-227集積あるいは海馬傍回萎縮の程度と有意な相関を認めず、大脳糖代謝低下程度及び大脳全体における灰白質萎縮率とのみ有意な相関を認めた.[11C]BF-227-PETはFDG-PETやMRIよりもAD早期診断精度に優れているが、進行度、重症度の評価にはFDG-PETやMRIの方が有用であることが示唆された.今後、さらに症例数を増し、経年的に追跡することが重要である.
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