目的:広汎性発達障害と定型発達対照者の脳MR画像を得て、これに最適なフラクタル解析を行うための画像前処理法、フラクタル次元算出法を考案し、両者のフラクタル次元を比較して、簡便なスクリーニング方法として利用できるか検討する。 対象:前年度に引き続き、広汎性発達障害患者(DSM-IV-TRで診断された自閉症、アスペルガー障害、特定不能の広汎性発達障害、ただしてんかんの併存など、器質的要因のある患者は除いた)と、定型発達対照者(患者群と性別と年齢をマッチさせた)のデータ収集を継続した。 方法:1.5テスラMRI装置を用いて、全脳にわたる高解像度3次元MR画像を得た。撮影パラメータは次のとおり:sagittal plane ; field of view、256×256mm ; matrix size、256×256 ; slicethickness、1.0mm。さらにVBM5を用いて灰白質画像を抽出し、BMP軸位断画像に変換した 解析:前年度と同様に、フラクタル解析専用ソフトウェアBenoit for MatlabでBMP画像を読み込み、大脳皮質と小脳皮質を対象として3次元フラクタル次元を求めた。 結果:H22年度に行った画像統計学解析の結果では、大脳灰白質のフラクタル次元は患者群で小さい傾向があった。広汎性発達障害では、脳萎縮に加えて、皮質構造のfoldingが少ない(複雑性が低い)可能性があった。H23年度は統計学的パワーを増すために症例を追加した。小脳皮質については、大脳皮質と同じ方法では灰白質・白質の分離が悪かったので、小脳では別の画像前処置を施してフラクタル次元を求めた。その結果、定型発達対照者と比較して、広汎性発達障害の大脳皮質ではフラクタル次元は小さく、小脳皮質では大きかった。
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