研究概要 |
認知症の周辺症状(behavioral and psychological signs and symptoms of dementia, BPSD)はしばしば認知症の診療や介護の中心的問題になるが、その生物学的基盤は未だ明らかでない。我々はこれまでBPSDの生物学的基盤を明らかにするために、軽度AD患者を対象に、BPSDと血中必須多価脂肪酸(essential polyunsaturated fatty acid, EPUFA)濃度の関連について検討している。現在まで、軽度認知障害(mild cognitive impairment, MCI)や比較的軽症のADを中心に症例数を増やし検討中である。現在までのところ以下の結果が得られてきている。すなわち、患者群において、血中EPUFAs濃度は認知機能の指標であるMini Mental State Examinationを用いて評価した認知機能と正の相関を示す。Neuropsychiatric Inventory(NPI)を用いて評価したBPSDの程度とEPUFAs血中濃度は負の相関を示し、しかもNPIの介護負担度とも血中EPUFAs濃度は負の相関を示すことが明らかになった。これらの結果はEPUFAs濃度がBPSDの出現予測のマーカーになる可能性を示唆していると考えられる。 現在、脳画像診断も含めた経時的変化を追うための症例数も増えつつあり、形態変化とEPUFAsやBPSDとの関連について検討も予定している。今後さらに症例数を増やし、これらを詳細に検討していく予定である。
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