研究課題/領域番号 |
21591508
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
松岡 理 富山大学, 医学部・地域医療支援学講座, 客員助教 (50377298)
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研究分担者 |
住吉 太幹 富山大学, 大学院・医学薬学研究部(医学), 准教授 (80286062)
鈴木 道雄 富山大学, 大学院・医学薬学研究部(医学), 教授 (40236013)
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キーワード | 認知症 / 周辺症状 / 脂肪酸 / 脳形態 / 予防 |
研究概要 |
当科の「ものわすれ外来」を受診している、アルツハイマー型認知症と軽度認知障害(mild cognitive impairment)と診断される患者について、神経心理学評価・周辺症状評価・介護者負担評価を実施した。同患者の末梢血サンプルから、細胞膜必須多価不飽和脂肪酸組成を解析した。同患者の脳MRIと脳血流SPECTの画像検査所見を解析した。 その結果、必須多価不飽和脂肪酸と認知機能および周辺症状との間に関連があった。すなわち、認知機能と末梢血赤血球膜の必須多価不飽和脂肪酸量との間には正の相関があり、家族の介護負担度と患者の末梢血赤血球膜の必須多価不飽和脂肪酸量との間には負の相関があった。必須多価不飽和脂肪酸量が多い患者ほど認知機能が良く、周辺症状が少なく、その家族の介護負担度も少ないことが示された。認知症と周辺症状における、食事内容の重要性を示唆する所見と言え、予防的見地から重要と考える。 また、軽度認知障害とアルツハイマー型認知症における脳画像所見の類似と差異についても解析し、複数の所見を同定した。例えば、患者の神経心理学的検査の得点と相関があったのは、アルツハイマー型認知症では海馬萎縮程度と脳血流低下程度であったが、軽度認知障害においては脳血流低下程度であった。これらは、早期診断の段階においては、脳MRI形態画像よりも脳血流SPECT画像の検査の方が鋭敏であることを示唆する所見と言える。 高齢化社会において認知症ケアの課題は非常に重要である。軽度認知機能障害とアルツハイマー型認知症の検査所見の異同を明らかにし、さらに介護負担に大きな影響を与えている周辺症状の生物学的基盤を解明するこの試みは、予防的介入方法の模索でもあり、社会的要請に沿うものと考える。
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