研究概要 |
自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder, ASD)患者の20%ほどが経過中に双極性障害(bipolar disorder, BD)を発症するという学術研究結果、および抑うつ状態を呈しBDと診断された青年の中にASDの併存が見つかること、ASDの第1度親族にBDの者が多いことという臨床的印象に基づき、両疾患が何らかの生物学的な共通基盤を有する可能性があるという仮説を立てて研究は始められた。臨床症状評価、人格検査ではなく視覚認知課題として用いたRorschach ink blot反応、3T magnetic resonance imagingをすべて行い得た、青年期あるいは成人期早期のASD39名、BD41名、健常対照52名が研究対象である。当該年度に得られた結果は、第一にAutism-spectrum Quotient (AQ)についてASDおよびBDが健常対照よりも有意に高く、また両群に有意差がなかった。第二にRorschach ink blot反応の各指標においてASDおよびBDが共に健常対照に比べて有意に異なっていたのは純粋形態反応(pure F%)と動物運動反応(FM)の二つであったが、この2指標はAQと有意な相関を有していた。第三に予備的検討であるが、diflusion tensor imagingにて、脳梁膨大部のfractional anisotropy値がBDにおいて他の2群よりも有意に低かった。さらに、BDとASDが併存している場合は、さらに有意に低値となった。これらの結果はASDとBDとの間に何らかの共通の病態が存在する可能性を示唆しており、継続した検討が必要である。
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