研究課題/領域番号 |
21591511
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
元村 英史 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (10324534)
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研究分担者 |
乾 幸二 三重大学, 生理学研究所・統合生理研究系, 准教授 (70262996)
前田 正幸 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (70219278)
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キーワード | 事象関連電位 / 自動注意処理 / 上側頭回 / 統合失調症 |
研究概要 |
我々は、脳内の感覚情報処理過程における基本的情報戦略は常に、先行する感覚情報との比較による変化探知に他ならないと考えている。我々の標的とする事象関連電位は刺激変化(音の始まり、音の終了、音の変化)後約100msにみられる前頭・頭頂優位の陰性電位(N1)である。平成21年度は音の始まり(ON応答)、音の終わり(OFF応答)に加えて連続音の突然の変化(Change応答)について健常者を対象とした脳波・脳磁図解析を行い、これらすべての反応は同一の神経細胞群(上側頭回)がその役割を担うことを明らかにした。つまり、その後に続く注意シフト(帯状回など)へのsensory gateが上側頭回に存在すると考えられる。 本年度は健常者(21名)と慢性統合失調症患者(21名)を対象として連続する音の周波数・音圧・音源定位を突然に変化させた場合にみられる変化探知反応について検討した。3種類のすべての音刺激変化において健常者と比較して慢性統合失調症患者ではN1の振幅に有意な低下を認め、潜時については音源を変化させた場合においてのみ統合失調症群で健常者より有意な延長がみられた。統合失調症では個々の音特性処理過程にその異常が存在するのではなく、認知機能障害の責任部位は上側頭回のsensory gateを担う皮質活動である可能性が示唆された。我々は、この聴覚変化探知反応は意識的に制御することのできない極めて安定した統合失調症の客観的診断指標となるのではないかと考えている。
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