研究概要 |
視床下部への入力経路である脳弓の線維構造について拡散テンソル画像による解析をおこない、脳弓のFA値測定に関して信頼性を高めるための方法を検討した。FA値測定に際して、FA map上でROIを設定して測定した報告も散見されるが、ROI設定時のバイアスが課題であり、FACT法によるfiber trackingをおこなう方法を用いた。脳弓全体を一度に描出してFA値を測定した報告もあるが、脳弓近傍のCSFの影響やS/N比の限界のために通常の撮像方法では脳弓全体を一度に描出することは困難という報告もある。脳弓はcolumn,body,crusそれぞれの部分によって屈曲などの形態的特徴や入出力神経線維の量が異なることを考慮すると、各部分に分けてFA値を測定する方法が測定信頼性を高めると考えられた。FACT法におけるFA値およびangleの設定閾値は報告によって異なり(前者:0.15~0.4、後者:37°~70°)、FA閾値が小さくangleが大きいほうが描出神経線維数は増えるが、ROI設定で神経束を得る際に目的の神経束以外の神経線維の混入も増えて見かけ上のFA値低下を生じやすくなる。しかし設定閾値を厳しくしすぎると、形態的に屈曲している脳弓のcolumnとcrusの部分は被験者によっては描出される神経線維数が著しく減少し、FA値低下の検出力低下につながるというジレンマが生じた。設定閾値を緩和して多数の神経線維を描出した後に解剖学的知見に基づいて脳弓の神経束のみを描出する方法も試みたが、神経線維の取捨のバイアスが課題であった。脳弓のbodyの部分は屈曲が少ないためか、FACT法の閾値設定による描出神経線維数の変動がcolumnやcrusに比べて少なく、患者群と健常群のFA値比較にはbodyのみを対象とすることが測定信頼性を高めると考えられた。columnとcrusのFA値測定方法についてはさらに検討を要する。
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