研究概要 |
平成22年度は、昨年度に最も効率よくγBAを誘発し、健常被験者(HC)群と統合失調症(SCH)群との間でγBAの差を見出しうる課題であることが判明したワーキングメモリ課題の一種であるSternberg’s Memory Taskを用いて、患者21名、健常被験者20名に対して、64チャンネル全頭型脳磁計を用いて、誘発される脳磁場活動を測定した。ガンマ帯域活動(γBA)の解析では、FFT、ウェーブレット、ICAといった基本的な時系列解析を用いてγBAを抽出し、空間フィルタ法を用いて活動源の推定を行った。その結果、課題成績では,SCZ群(54.3±7.3)はHC群(58.3±1.4)に比し有意に低下した(両側t検定p<0.05).脳磁図の結果では,30-80Hzの帯域におけるERS/ERDの脳内分布について,encoding区間,retention区間とも両群に有意差は認められなかった.しかしながら,より高周波帯域である50-80Hzの帯域においては,encoding区間でSCZ群はHC群に比し上頭頂小葉にて有意なERSの低下が認められ,retention区間では後頭葉および左背外側前頭前野にてSCZ群ではERDが,HC群ではERSが認められ,両群で有意差が認められた.これはSCH群ではHC群に比べ作業記憶に関する神経活動がより増強していることを示唆しており,難易度が低い作業記憶課題においては,SCH群はHC群よりもGBAが増強したという過去の報告と一致している.神経活動について,ERSでは増強,ERDでは減弱していると考えられているため,作業記憶に関連するとされる左背外側前頭前野での記憶の保持に関してHC群で神経活動が増強し,SCH群では減弱していることが示唆された.
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