研究概要 |
初年度から,大きな成果を得ることが出来た.「研究実施計画」に記載した通り,初年度は,局所脳血流と認知機能テストの関連を検討し,認知機能テストの意味を検討した.詳細な認知機能評価と脳血流評価を行うことにより,それぞれの認知機能テストが,どのような部位の異常と密接に関連しているのかを評価することが可能となる.これは,言い換えれば,どのテストを行えば,特定の脳局所機能をより特異的に評価することが可能か,を検討することである.最近では.認知症の早期から実行機能障害が存在することが広く知られている.初年度は,軽度認知症患者を対象として,ウィスコンシンカード分類テスト(WCST)のスコアと脳血流との関連を検討した.結果として,WCSTの達成カテゴリー(CA)スコアは特に左の中心前領域の機能を反映し,PEN型保続スコアは右視床の脳血流と相関することが示された.WCSTの中で,CAスコアとPENスコアが異なった神経基盤から成る認知機能を反映している可能性が示唆された(雑誌論文1).さらに,認知症患者における問題行動についても検討を加えた.非常に頻度の多い症候である徘徊と稀な症候である弄便を対象として,症候を呈する患者の臨床特徴を明らかにした,どちらも不眠や重度の認知障害と強い関連を有していた,それに加えて,徘徊は落ち着きの無さ・陽性感情・他者への愛着と関連しており,弄便は陰性感情との関連が強かった(雑誌論文2).この報告は認知症患者の弄便について,まとまった数の症例を検討した世界で初めての論文であり,非常に貴重な研究と考えている.
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