研究概要 |
2年目も大きな成果を得ることが出来た.本年度の「研究実施計画」に記載した通り,2年目も,局所脳血流と認知機能テストの関連を検討し,認知機能テストの意味を検討した.詳細な認知機能評価と脳血流評価を行うことにより,それぞれの認知機能テストが,どのような部位の異常と密接に関連しているのかを評価することが可能となる.これは,言い換えれば,どのテストを行えば,特定の脳局所機能をより特異的に評価することが可能か,を検討することである.最近では,認知症の早期から実行機能障害が存在することが広く知られている.本年度は,軽度アルツハイマー病患者を対象として,仮名拾いテストのスコアと脳血流との関連を検討した.結果として,仮名拾いテストのスコアは前部帯状回膝下部の脳血流と相関することが示された(雑誌論文3).前頭葉眼窩面の機能を反映した検査は少なく,その点からも仮名拾いテストの有用性および意義を明らかにした.次に,認知症患者における問題行動についても検討を加えた.アルツハイマー病において非常に頻度の高い症候である繰り返し質問行動と脳血流との関係を検討した(雑誌論文2).繰り返し質問行動を呈する患者では帯状回の血流が比較的保たれており,何らかの不安が繰り返し質問行動の背景に存在する可能性が示唆された.本研究は,脳血流の観点から,繰り返し質問行動の病態機序を検討した世界で初めての論文であり非常に貴重な研究である.また,世界的に頻用されている簡便な認知機能検査であるAddenbrooke's Cognitive Examination (ACE)の日本語版を作成し信頼性・妥当性の検討も行った(雑誌論文1).ACEは世界的に広く用いられている検査であり,その日本語版を作成したことは,実地の認知症臨床に対する大きな貢献と考えている
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