研究概要 |
最終年度も大きな成果を得ることが出来た.まず,軽度認知障害(mild cognitive impairment ; MCD)の早期診断に役立つ検査方法を検討し報告した.具体的には,ケンブリッジ大学から報告されたAddenbrooke's Cognitve Examination-Revised (ACE-R)の日本語訳作成を行った.国際的な相互比較を可能とするために,オリジナル版と同等の難しさになるように翻訳を行った.そして,正常高齢者や認知症患者を対象としてACE-Rを施行し,その信頼性や妥当性を検討した.その結果,MCIおよび認知症のカットオフ得点としては,それぞれ88/89点および82/83点が妥当であることが示された.このカットオフ得点はオリジナル(英語版)と同じである.このような英語版との同等性を確保した日本語版の検査は非常に少なく,その意味でもACE-R日本語版の作成は大きな達成である.さらに,このACE-Rについて,世界的な標準検査であるMini Menta State Examination (MMSE)よりもMCI診断に有用であることを示し,MCIの診断および予後調査を行う上で非常に有用なツールであることを示した. また,「研究実施計画」に記載した通り,Wisconsin Card Sorting Test (WCST)やFrontal Assessment Battery (FAB)の成績と,局所脳血流との関係を検討した.具体的にはアルツハイマー病患者で,WCSTの保続エラー数が前頭葉内側面の血流と関連することを,世界で始めて明確に示し論文として報告した.さらにFABスコアが前頭葉背外側面の血流と関連していることを軽度アルツハイマー型認知症の患者を対象として報告した.どちらも検査の意味を明確にしたという点で臨床的な意義は非常に大きい.
|