研究概要 |
25人の気分障害患者(19人は大うつ病、9人は双極性障害)と年齢、性別、IQが統計的に一致した25人の健常者を用いた。すべての参加者は右利きだった。アクティブグレリンとデアシルグレリン血漿濃度は、朝食前空腹時に測定された。採血時に食欲低下について主観的評価を行った。この研究は山口大学医学部附属病院Institutional Review Boardsの承認を得ている。すべての参加者は研究参加前に研究の趣旨を説明し文書で同意を得た。MRIは1.5Tを用いた。画像はSPM8のvoxel-based morphometryのDARTELを用いて前処理を行った。全脳解析はfactorial designを用いておこなった。関心領域はあらかじめ、前部辺縁系構成部位と定義した。 結果、気分障害患者のアクティブグレリン濃度(22.8±13.9 fmol/ml)は健常者(15.9±11.9 fmol/ml)と比べて高かった。しかしアクティブグレリン、デアシルグレリン濃度とも、気分障害患者と健常者では有意差は認めなかった(P=0.07,0.98)。全脳解析では、全サンプルでみると右下前頭灰白質体積はアクティブグレリン濃度と有意な正の相関を示した(x=-47,y=23,z=13;T=4.73,k=225,P_<FWE><0.01)。気分障害患者はこの右下前頭灰白質体積は健常者より大きかった(F=0.83,P<0.05)。デアシルグレリン濃度と相関を示す脳部位は見られなかった。 今回の研究結果から、気分障害患者は異常なアクティブグレリン濃度を持っている可能性があり、それは気分障害患者の病態にかかわる下前頭回に関連していることが示唆された。この予備的研究の限界は、サンプルサイズが十分でないこと、双極性障害および大うつ病をあわせて解析したこと、患者の状態像を考慮していないことが考えられた。
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