研究概要 |
安定した条件で電気生理実験を行うために、モデル動物の作成に先がけて、正常なマウスにおいてGABAA作動性シナプス後電流の記録を行った。海馬においてドパミン(20μM)は誘発性GABAA作動性シナプス後電流を抑制し、その効果は可逆的であり、用量依存的であった(% inhibition : 5μM, 17.9%, 20μM, 22.1%, 100μM, 30.4%)。それに対して自発性GABAA作動性シナプス後電流はドパミン(20μM)の投与により、頻度が用量依存的に増強された(5μM, 124.5%, 20μM, 272.4%, 100μM, 303.0%)。自発性GABAA作動性シナプス後電流に対するドパミンの作用する受容体を決定するために、アゴニスト、アンタゴニストを用いた実験を行った。フォスファチジルイノシトールにリンクしたD1受容体(PI-linked D1受容体)アゴニストであるSKF83959の投与により頻度が増強されたのに対し、アデニレートシクラーゼにリンクする古典的なD1受容体アゴニストであるSKF83822、D2受容体アゴニストであるquinpiroleを投与しても頻度は増強されず、PI-linked D1受容体アンタゴニストであるSKF83566の投与によりドパミンの効果は抑制されたのに対して、D2アンタゴニストであるスルピリドはドパミンの効果に影響を与えなかった。このことから、ドパミンの作用はPI-linked D1受容体を介することがわかった。また、ドパミンによる増強効果は発達段階で異なり、生後0-4日(246%)<生後5-9日(389箔)<生後10-14日(837%)で、あった。ドパミンはGABA作動性介在ニューロンに対して複雑な修飾作用を示し、生後早期にドパミンが過剰分泌されることにより神経活動を修飾され、正常な脳発達に影響を与えるのと思われる。
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