当該年度には、まず正常マウスの海馬CA1領域の錐体細胞、介在ニューロンの興奮性に対するドパミンとSKF83959の効果を調べ終えた。カレントクランプ法にて、入力した電流に対して発生する活動電位の頻度、発火閾値、静止膜電位、入力抵抗などにより評価した。現時点でデータ分析を終えた範囲内では、ドパミンは錐体細胞の興奮性を低下させ、介在ニューロンの興奮性を増強することがわかった。続いて、SKF83959による効果についてこれらの細胞への効果があることは確認できているが、詳細は現在データ分析中である。今後、ドパミンにより興奮する介在ニューロンをより詳細に分類していくことが必要である。次に必要なのは統合失調症モデルマウスで同様の検討することである。計画時点ではNMDAアンタゴニスト投与によるモデルマウスを提案していたが、より発展性のある統合失調症モデルマウスとして、social isolation model mouseを導入することに決め、現在そのマウスを作製中である。このモデルは薬物などを使用せずに、飼育環境の調整により作ることができ、モデルとしてより本来の疾病に近いものである可能性がある。モデルマウスの作製ができ次第、同様に海馬CA1領域の錐体細胞と介在ニューロンの興奮性について実験を始めていく予定である。現時点の結果だけからしても、統合失調症で障害されているとされる介在ニューロンの興奮性にドパミンやそのアゴニストが影響することを確認できたのは、統合失調症の病態を考えていく上で意義深いと考える。
|