研究課題
双極性障害の衝動性がtrait(素因)として高いこと、それが自殺に及ぼす影響について調査を継続している。衝動性については、生物学的マーカー(エンドフェノタイプ)は存在しないため、この研究では、衝動性に注目し、衝動性検査(特にBarratt Impulsiveness Sccale-11 : BIS-11)を用い、衝動性を中心に双極性障害の自殺研究することにより、自殺のリスクスクリーニングの構築を目指した。これまで、患者86名(気分障害圏56名、統合失調症圏15名、不安障害圏13名、人格障害圏2名)とコントロール群30名を対象に調査を行った。これまでの調査の結果、コントロール群、気分障害(単極性障害、双極性障害)、統合失調症においてBIS-11を用いた衝動性の評価を行ったところ、コントロール群と、気分障害、統合失調症では優位差があった。また、単極性障害(うつ病)より、双極性障害の方がBIS-11が高く、衝動性が高いことが示唆された。更に投与されている薬物とBIS-11の関係についても調査すると、バルプロ酸を用いた気分障害圏の患者群が、用いられていない気分障害圏の患者群より、BIS-11の点数が低く、衝動性が軽減していることが示された。臨床経過との関連でも、BIS-11の低い人は自殺企図歴がない傾向にあり、臨床的に自殺の危険因子予測に役立つ可能性が示唆されている。以上のことより、双極性障害は単極性障害より衝動性が高く、自殺率の危険性が高いことを示せており、より有効な自殺スクリーニングの構築が出来つつある。
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臨床脳波 51
ページ: 701-707