研究概要 |
H21年度は聴覚MMN(mismatch negativity)と同等の生理学的意味を持つ脳活動をfunctional MRI(fMRI)で抽出するため、fMRIと脳波の同時計測を行った。fMRIではevent-relatedデザインを用い、同時測定で得られたMMNのLORETA(low resolution brain electromagnetic tomography)による活動源電流推定を行った。予備実験ではStimulus Onset Asynchrony(SOA)600msのオドボール課題を聴覚刺激とし、frequency mismatch(frequent/deviant : 1000Hz vs. 2000Hz)(1000 Hz vs. 1050 Hz), duration mismatch(550ms vs. 450 ms)を用いた。結果としてfMRIおよびLORETAにおいて、middle temporal gyrusまたはsuperior temporal gyrusにおいて有意な活性を認め、従来のMMNのgeneratorの報告と一致する結果であった。しかし問題点として、撮像と聴覚刺激の同期は、手動でタイミング調整され完全には同期していない。そのため正確なhemo-dynamicsを得られず、条件間のサブトラクションの効果がBlood Oxygenation Level Dependent(BOLD)反応において得られてない可能性があった。またEvent related potentials(ERP)波形においても、MRIのメカニカルノイズによる反応がランダムなタイミングに加算平均されることにより、大部分相殺されていた。frequent刺激に対する波形はその中にマスク(埋没)されフラットに近い波形となった。 そこで今回われわれはMRI撮像のタイミングと聴覚刺激を完全に同期させる試みを行った。オドボール課題はSOA 600msのduration mismatch(100 ms vs. 50 ms)とした。その結果、ERP波形においてメカニカルノイズによる成分やFrequent刺激に対するN100、N200などの成分の抽出はある程度達成できた。またBOLD反応においてより正確なhemo-dynamicsを得られ、条件間のサブトラクセョンの効果をより精密にすることができた。
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