医学生に対して、自殺予防への理解と具体的な介入スキルを身につけるために、厚労省・警察庁そしてNPO団体の資料を基に「自殺予防」に必要な「予備知識」について、「現状」「自殺者」「原因」「予兆」「予防」に分類し計50の下位項目に分類し、医学生の意識調査を行った。また、医学生に小講義や討論の前に「自殺企図」に対する率直な意見を求めるためのアンケートを行った。 この調査の結果から、医学生には「自殺は誰にでも起こりえる」といった認識に乏しい半面、「自殺と精神疾患の関連性」の認識も以外に乏しいことが伺えた。自由記載から、完遂者に対するイメージをまとめてみると「止むに止まれぬ状況で精神的に追い詰められた孤独な精神的弱者」、未遂者については「死ぬ気はなく、周囲に何か訴えたい・興味・注意を引きたい者」といった内容であった。先行研究から自殺未遂者ケアが自殺予防の重要な鍵とされる。医学生は「完遂者」と「未遂者」の捉え方に一線を引いており、自殺予防教育の必要性を再認識した。自殺予防のゲートキーパーになり得る医師養成のためには、医学教育の中で自殺に関する医学・生物学的、心理・社会学的見地からの教育が必要と考えられた。 この結果を基に、自殺予防対策のための効果的なグループ討論を行うために、2-3名の小グループを構成しパソコンを使って、予備調査の結果を基に各グループの意見を抽出、発表を行い、各グループの問題点の総括を全体討論で行った。その結果、医学生にとって、まずは自殺問題に関して視覚的に興味を持って受け止めやすい教材の必要性が指摘された。これを基にパワーポイントを用いて、臨床の場面で生かせる「自殺予防対策」のロールプレイ教材の作成と、「自殺予防対策の啓発活動」を行うリーフレット作成を行った。今後、医学生にとって印象に残りやすい有用な自殺予防教材の開発を検討していきたい。
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