研究課題/領域番号 |
21591535
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
大西 哲生 独立行政法人理化学研究所, 分子精神科学研究チーム, 研究員 (80373281)
|
研究分担者 |
吉川 武男 独立行政法人理化学研究所, 分子精神科学研究チーム, チームリーダー (30249958)
|
キーワード | Ldb2 / 統合失調症 / 染色体異常 / モデルマウス / ノックアウトマウス / 行動実験 / 扁桃体 / 恐怖条件付け |
研究概要 |
我々は染色体相互転座を伴う統合失調症一例を発見し、その4番染色体側の切断点に位置する遺伝子としてLdb2(DISC-M)を同定した。本研究では、主にLdb2ノックアウトマウスが示す表現型を手がかりにして、ほとんど判明していない本遺伝子の機能の機能を探り、さらにはその統合失調症との関連を主に動物行動学的アプローチにより明らかにすることを目指した。ノックアウトマウスを海外から導入し、遺伝的背景をC57BL/6に出来るだけ近づけるため5世代以上戻し交配行った。そこで獲得したヘテロマウス間の交配(intercross)によりノックアウトマウスを獲得した。ノックアウトマウスは一見正常に見え、特段問題なく成長した。10週齢からノックアウトマウスを我々の行動テストバッテリーで評価したところ、音と電気ショック刺激による恐怖条件付けが著しく障害されていることが判明した。その一方で、プレパルス抑制(PPI)試験やオープンフィールド試験では際だった異常は認められなかった。また聴覚や痛覚には異常は全く認められなかったことから、Ldb2は扁桃体(あるいはや海馬)が正常に機能するのに関与する遺伝子ではないかと推察された。扁桃体や海馬は、統合失調症の発症に重要な役割を果たす可能性がたびたび報告されていることから、本症例の病態出現とLdb2遺伝子の機能異常の関連が示唆された。Ldb2遺伝子産物はその構造から転写調節因子と予測されることから、今後Ldb2が関わる転写ネットワークを明らかにすることにより、統合失調症発症メカニズムの解明に対して有益な情報を与えてくれるものと期待される。
|