研究課題/領域番号 |
21591535
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
大西 哲生 独立行政法人理化学研究所, 分子精神科学研究チーム, 研究員 (80373281)
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研究分担者 |
吉川 武男 独立行政法人理化学研究所, 分子精神科学研究チーム, チームリーダー (30249958)
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キーワード | 統合失調症 / ノックアウトマウス / 染色体転座 / 転写因子 / ドーパミン / グルタミン酸 / 行動実験 / マイクロアレイ |
研究概要 |
Disc-MノックアウトマウスはメタンフェタミンやMK-801に対し、野生型と比較してより顕著な自発運動量の促進が見られた。また、MK801を急性投与すると、異常な飛び跳ね行動が、野生型と比較してより顕著なプレパルス抑制の低下が起こった。これらの結果は、統合失調症患者が精神賦活剤により感受性が強いという知見や、統合失調症のドーパミン仮説やグルタミン酸仮説とも矛盾しない結果である。Drug-naive時における、自発運動量の上昇、恐怖条件付けの不能、作業記億の障害を思わせるY迷路における交替率低下傾向などの表現型と合わせて考えると、Disc-Mノックアウトマウスは、「統合失調症様」であると考えられた。 このような統合失調症様症状の生物学的基盤を考えるため、DISC-M/Disc-Mが転写調節因子をコードすることに着目して、網羅的トランスクリプトーム解析を行いその下流遺伝子群の同定を試みた。今回新規に開発したDISC-M/Disc-M特異的モノクローナル抗体を用いた免疫組織化学解析により、幼若マウス脳においてはDisc-Mタンパク質は大脳皮質や海馬の神経細胞に特異的に発現することが判明したことから、その両部位を解析の対象とした。その結果、それぞれの部位だけで変動する遺伝子や共通して変動する遺伝子群を見出した。例えばノックアウトマウスの海馬で特異的に発現上昇(約8倍)する遺伝子としてTtrがある。Ttrは甲状腺ホルモンやビタミンAをの運搬体を担うtransthyretinをコードしており、脳では脈絡叢にほぼ限局して発現している。この遺伝子内のミスセンス変異は、時に精神症状も引き起こすトランスサイレチンアミロイドーシスをひこ起こすことが知られている。本研究により、Disc-Mが制御する遺伝子ネットワークの一端を明らかにすることができた。
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