研究概要 |
〔遺伝子改変マウスの交配〕 本研究ではタウ(P301L),TDP-43(G298S)の2種の神経細胞内異常蓄積形成トランスジェニック(Tg)マウス系統に対して,その加速因子となることが予測されるAPPsw-Tgマウス(家族性アルツハイマー病変異)およびグラニュリン(GRN)ノックアウト(KO)(家族性前頭側頭葉変性症 (FTLD)-TDPの遺伝的異常)マウスの交配を試みた.APP-Tgは闘争的な性質を有するため1匹単位での飼育が必要であった上(→必要なケージ数の増大),交配で得られたマウスが若齢で原因不明の突然死を起こすことが多く,十分な解析を加えられる系統は得られなかった.またGRN-KOは繁殖や子育てに問題があり交配マウスの作出に期間を要したため,本研究期間において一定の解析結果を得られたのは,TDP-43(G298S)Tg/GRN-KOおよびタウ(P301L)/GRN-KOの2系統であった.TDP-43(G298S)は加齢の後,僅かに異常TDP-43蓄積を示すが,TDP-43(G298S)Tg/GRN-KOとすることにより,免疫組織化学的には軽度の(ただし生化学的には差を検出できない程度の)TDP-43異常蓄積増加が認められた.タウ(P301L)/GRN-KOもタウ(P301L)単独より異常リン酸化タウ蓄積の増加が認められた. 〔ヒト剖検脳の解析〕 本研究を立案した後,タウ陰性TDP-43陰性FTLDに異常蓄積する蛋白質としてFUSが同定されたた.FUSはTDP-43と同じRNA結合蛋白質であり,発症する疾患も共通することから,剖検脳を用いたFUSの解析を行った.FUSは大脳皮質において正常でも小量,神経突起内に存在し,FTLDやアルツハイマー病では神経突起内FUSの増加が認められた.神経変性と神経突起~シナプスにおける転写調節の異常との関連が示唆された.
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