目的:進行性の疾患であり、根治薬がないため対症療法が治療の基本戦略とならざるを得ないアルツハイマー病(AD)にとって、アセチルコリン分解酵素阻害薬の投与による、注意力の増加と反応性の向上、病気の進行遅延は、同病に対する確立された治療法である。しかし、医療現場で患者を診療していると、同薬剤に対して反応を示す患者(responder)と、あまり反応を示さない患者(non-responder)がおり、臨床的な効果に関しては個人差が多いことが分かる。そこで今回、ドネペジル(DNP)PETを用いて、responderとnon-responderの違いを検討した。対象と方法:NINCDS-ADRDA基準によって診断された24名のAD患者を対象に、研究を施行した。まず第1回目の[^<11>C]-donepezil PET検査を行う前に、全般的認知機能としてMMSE、注意機能としてWAIS-RDigit Symbol(DigSm)を施行した。そして、DNPを1日5mg、6ヶ月間経口投与を行った。6か月後に、2回目のPET検査を施行し、全般的臨床改善度:Clinical Global Impression scale (CGI)、DNP結合部位の量を反映するDistribution Volume(DV)、投与前に測定した心理検査尺度を再度評価した。結果:DigSmは基準時のDV量と相関したが、MMSEとは相関しなかった。24名中12名が、MMSEで3点以上の改善を示したresponderであったが、基準時のDVと6ヶ月間の変化率(%DV)はresponderにおいてnon-responderよりも高い値を示した。基準時のDVと%DVは、DigSm変化量とCGIと相関した。考察:以上より、基準時にアセチルコリン量が多いほど、DNP治療により注意力が向上し、臨床的にも効果が認められた。DNP PETは経口的に投与されたDNPの臨床効果を予測できることが示唆された。今後、適切や薬物療法の選択に応用できる。
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