研究概要 |
まず大気マイクロPIXE測定試料の精緻化を行った。患者血液をEDTA2Na人り容器で採取し、マイラー膜への固定法を検討した結果、遠心分離した赤血球を数滴のせ、乾燥後薄離することで状態の良い試料ができることがわかった。凍結乾燥法の検討をおこない、マイラー膜に滴下した試料を直接液体窒素にいれて凍結し、真空蒸着機で乾燥させる方法(オルテガ変法)が最適であることを確認した。また、赤血球洗浄液が測定値に及ぼす影響を検討したが、生理食塩水を使用しても、赤血球中Na,Clの測定値に影響しないことが証明されたため、赤血球は生理食塩水で洗浄をおこなった。 次に、赤血球マップのマーカーとなる元素を検討した。その結果、赤血球の元素スペクトラの中でC1が最も高値であるこから、赤血球マッピングのマーカーとして使用した。 そこで、肝硬変患者5名の赤血球をマイクロPIXEで測定した結果、2名においてMgの増加を認めた。これまで、肝硬変患者のCT像で脳内にMgの沈着を認め、肝性脳症との関連が報告されてきた。肝硬変患者の赤血球では肝性脳症をきたす以前から、赤血球Mg濃度が増加している可能性が推察され、今後症例を増やして検討する予定である。 銅の代謝異常疾患であるウイルソン病の2例において、赤血球元素分布の変動をマイクロPIXEで検討した。予想に反して、赤血球中銅の異常は認めなかったが、他の元素分布の変動と、疾患との関連を検討中である。 シスプラチン(抗がん剤)で治療中の肺癌患者の赤血球をマイクロPIXEで測定したが、赤血球中からプラチナは検出されなかった。
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