平成22年度は大気マイクロPIXEを使用して、透析患者の赤血球元素分析を行い、腎性貧血の解明を行った。その結果、透析患者の赤血球の形態的変化が明らかとなったが、赤血球X-線スペクトルは健常人と明らかな差異を認めなかった。平成23年度は潟血療法を行っているC型慢性肝炎症例の赤血球元素分析を行い、健常者と比較検討した。 「対象および方法」健常人4名と潟血療法を行っているC型慢性肝炎患者3名から、EDTA-2Na入り容器で採血し、オルテガ変法で作成した赤血球試料を高崎量子研究所の大気マイクロPIXEで測定した。照射野は50×50μMに設定し、総カウントを5万に設定した。 「結果」 (1)潟血症例では健常者に比べ、比較的小型の赤血球を多く認めるが、変形は目立たなかった。 (2)赤血球の鉄は、健常者では3-4個にわかれて分布するが、潟血症例では1-12個に分かれ、かつ班状に集合する傾向を認めた。 (3)赤血球のカリウムは、健常者ではドーナツ状に分布し、一部穎粒状集積を認めた。潟血症例ではドーナッツ状に分布するが、健常者にくらべ大きな集積を形成する傾向にあった。クロールや硫黄もカリウムと同様な分布を認めたが、カルシウムの赤血球中分布は両者間で差異を認めなかった。 「考察」今回の研究から、潟血療法を行っているC型慢性患者の赤血球中鉄の分布は健常者と明らかに異なっているが、治療効果との関連については不明であり、症例を重ねて検討する。
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