疾患に伴い出現する症候性貧血や、治療の副作用としての貧血など、貧血の病態も多岐にわたる。抗がん剤、放射線、インターフェロンなどで引き起こされる貧血は重篤化することがあり、治療効果へも影響する。そのため、患者への負担が少ない診断法の開発が切望されている。本研究では、大気マイクロPIXE装置を用いて、赤血球内元素の変動を解析して、治療に合併する貧血の解明を行った。 最初に大気マイクロPIXE測定用赤血球試料作法としてオルテガ変法を確立した。そして、健常者赤血球の元素は赤血球の形態に沿って分布すること、小結節状に集簇傾向を認めることを発見した。 透析患者では変形赤血球の出現が目立ち、元素は顆粒状から斑状に集簇傾向を認めた。特徴的な所見として、赤血球内鉄は健常者では3-4分割されて分布するが、透析患者では2-3分割されて分布する傾向を認めた。インターフェロン治療中のC型慢性肝炎患者赤血球の元素は顆粒状から斑状に集簇傾向を認めたが、インタフェロン投与量は元素分布の変動に影響した。 これらの成績から、大気マイクロPIXEを用いた赤血球内元素分析は治療の副反応として貧血の病態解析に有用であることが示唆された。
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