研究概要 |
塞栓術後の脳動脈瘤の評価に再塞栓術を急ぐ画像的サインを見いだすための最適なMRA評価法を研究した。臨床例のMRA,DSAデータの解析:塞栓術後の脳動脈瘤に関して、再破裂を予想する因子として、くも膜下出血での発症であったか否か、塞栓術が完璧に行われたかどうか、動脈瘤の頚部に残存腔が認められた状態であったかどうか、初回治療時点での動脈瘤のサイズはどうであったか、動脈瘤の径の増大が経過中に認められたかどうか、を検討した。統計学的なパラメータとして動脈瘤の壁の増強効果の有無を対比させ、上記の因子との有意差の検討を行った。今年度の新鮮症例での脳動脈瘤塞栓術例の臨床経過情報と塞栓粥後のDSA、MRAデータ登録は28例であった。今年度は塞栓術後の再破裂例は1例であり、本例にも造影MRA検査を行うことができた。結果:塞栓術の完璧性、動脈瘤の頚部の残存、動脈瘤の径の増大傾向を認めること、に関して瘤壁の増強効果の有無での統計学的有意差(p<0.001)が認められた。くも膜下出血での発症であったかどうか、動脈瘤のサイズが10mmを超えるかどうか、には有意差は認められなかった。今年度、再破裂症例は最初の塞栓術後には動脈瘤壁の増強効果は認められなかった。動脈瘤塞栓術がきわめて不十分な塞栓に終わっていた症例であり動脈瘤壁にコイルの密着の不良な場合にも動脈瘤壁の染まりを意味する外膜の新生血管増生は来さない可能性が示唆された。また瘤内に血栓形成を認める3例に関しては前例瘤壁の増強効果を認め、造影剤使用による血栓の描出の明瞭化は追加塞栓術の断念という形ではあったが有用な情報を与えてくれた。結論:造影剤を用いたMRAは流速の遅い瘤内血流の評価に優れ、またその元画像は動脈瘤壁の増強効果の有無とともに治療方針を左右する情報を付加することができる。これは塞栓脳動脈瘤の再破裂徴候検出のために意義のあるものである。
|