研究概要 |
【目的】Gd-EOB-DTPA造影MRI肝細胞造影相で等~高信号を呈する肝細胞癌の生物学的特徴を解明するため、腫瘍マーカーAFPおよびPIVKA-IIの産生と組織像とに着目し、低信号肝細胞癌との比較により検討を行った。 【対象・方法】外科的切除または生検で診断された肝細胞癌179結節を対象とし、EOB造影MRI肝細胞造影相で背景肝と比較して低信号を呈する群(n=145)と、等または高信号を呈する群(n=34)とに分類し、以下の項目について比較検討した。 1.MRI撮影前後1ヶ月以内の血中のAFP濃度(ng/ml)とAFP-L3分画(%)、PIVKA-II濃度(mAU/ml)。 2.切除または生検標本の免疫染色によるAFPおよびPIVKA-II発現の半定量的評価(grade O:発現なし,grade 1:弱発現,grade 2:中等度発現,grade 3:強発現)。 3.HE染色による組織像(サイズ、肉眼型、分化度、脈管浸潤、被膜浸潤、肝内転移等)の評価。 【結果】血中腫瘍マーカー濃度は低信号群と比較して高信号群で有意に低く、AFPは1082.3ng/ml vs 12.3 ng/ml(P=0.04)、L3分画は18.3% vs 6.2%(P=0.02)、血中PIVKA-IIは1685mAU/ml vs 205mAU/ml(P=0.02)という結果であった。免疫染色おける発現も低信号群と比較して高信号群で有意に減少しており、AFPの免疫染色gradeは0.91 vs 0.26(P=0.0002)、PIVKA-IIのgradeは1.34 vs 0.67(P=0.02)であった。また切除標本の組織像による検討では、低信号群と比較して高信号群では門脈浸潤の頻度が有意に低かった(31.9% vs 6.3%, P=0.04)。分化度等、他の因子については有意差を認めなかった。 【結論】EOB造影MRI肝細胞造影相で等または高信号を呈する肝細胞癌は、低信号肝細胞癌と比較してAFPおよびPIVKA-IIの産生が抑制されており、また組織学的門脈浸潤の頻度が低かった。これらの結果により、等または高信号肝細胞癌は低信号肝細胞癌と比較して生物学的悪性度が低いという可能性が示唆された。
|