2011年4月までに信州大学医学部附属病院移植外科で施行された279例の生体肝移植のうち、2007年1月以降で術前に当院で腹部造影CT検査を行っているドナー20例、術前・術後にMDCT検査を施行したレシピエント20例を対象に3次元肝容積解析ソフト(日立メディコ社Organ Volume Analysis)を用いて、ドナー・レシピエントの門脈・肝静脈の破格を含めた解剖(肝静脈枝間のコミュニケーター)を描出し、門脈枝潅流領域の肝容積、肝静脈枝還流領域(V5、V8)とその温存・切離とドナー肝切除後の肉眼所見・臨床での区域容積のの解析を行った。 中肝静脈分枝で還流される領域が右葉の50%を越える症例は20%存在した。中肝静脈分枝で還流される領域が右葉の50%を超えるドナーであっても、術中には、同静脈根部でクランプを行った場合に静脈枝間の吻合存在する場合や、同領域の門脈枝で逆流が生じ、領域の鬱血を生じる場合があり、術前検査では評価は困難であった。同ドナーにおける肝再生・肝萎縮の変化を外来観察中に造影CT検査を行うことで評価を進めている。 しかしながら、撮影条件によっては、静脈の解析が困難な場合や、繰り返し造影剤を投与することに対する倫理的問題も生じている。当院放射線科と協議を重ね、同ソフトで解析に適したMDCT造影条件を確立し、さらなるデーターの積み重ねについては、当検査(造影剤使用)のドナーへのインフォームドコンセントも含め検討中である。その上で、肝葉容積の変化を統計的に分析しドナーにおける右葉摘出の限界とレシピエントにおける肝静脈再建の指標を算出する。 国内外の肝移植関連学会においての発表予定であり、論文の作成中である。
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