研究概要 |
本研究は、脳腫瘍について、極小超常磁性体酸化鉄(ultrasmall superparamagnetic iron oxide,USPIO)造影MR画像が腫瘍部分及びその周囲の免疫環境を反映する新しいコントラストを提供可能であるかどうかを明らかにするために、神経膠腫モデルラットを用いてGd及びUSPIO製剤による造影MR画像を撮像すると同時に免疫系の関与、特に樹状細胞の関与についての組織標本を得、a)USPIOによる造影効果と造影剤投与後撮像までの時間との関係、b)造影効果とBlood Brain Barrier(BBB)破綻の有無との関係、c)MR信号変化をもたらすUSPIO造影剤由来の鉄の腫瘍及び腫瘍周囲の局在の決定、d)造影効果への樹状細胞の関与について評価することを目的としている。 平成22年度は、作成したENU(N-ethyl-N-nitrosourea)誘発神経膠腫モデルラット15匹についてGd及びUSPIO製剤による造影MR画像を撮像した。Gd造影画像により造影される部分にBBB破綻があるとみなし、USPIO造影直後及び2,4,6,24,48,72時間後のT2,T1強調像をそれぞれスピンエコー法とグラジエントエコー法で撮像した。USPIO造影画像は造影剤注入後6時間までは、注入後時間と撮像法に依存して造影効果が複雑に変化したが、24時間以降は造影剤によると考える信号変化を視覚的に認めなかった。撮影後、灌流固定し得られた脳組織切片に対して鉄染色と血管内皮細胞に対する免疫染色を施し、USPIO造影剤由来と考える鉄の分布とUSPIO造影画像の造影効果、BBB破綻との関係の評価を行っている。加えて、造影効果への樹状細胞の関与の評価を行うためにさらに妊娠Fischer344ラット計2胎にENUを腹腔内投与し神経膠腫モデルラットを作成中である。
|