平成21年度の本研究目的として、一体型PET-MRI装置による脳血管系の画像化とPET画像との重ね合わせ解析が可能であるかについて検証を行った。一体型PET-MRI装置では、PET装置による脳エネルギー代謝や脳アミノ酸代謝などの機能画像と、MRI装置での脳組織および脳血管系の形態学的情報が同時に取得可能であり、脳虚血モデルでの血行動態の変化と組織障害との関係を検証するにあたって、両装置での描出能が重要となる。われわれは、本装置を用いた正常ラットの脳血管系の描出能について初年度に検討を行った。正常ラットの頭頚部組織のMRI T1強調画像を撮影後、同部位のMRAngiographyを造影剤未使用、使用に分けて撮影し、頚部から頭部の血管系の描出を試みた。MRAngiographyに使用した撮像系列は、Time-of-FlightによるFLASH法(gradient echo法)で、Flip Angle=90度、撮影視野60mm、TR=50msec、TE=7.6msecであった。その結果、造影剤未使用下では頚動脈のみ描出可能であり、頭蓋内の動脈を同定することは困難であった。また、造影剤使用下では頭蓋内血管は良好に描出されるものの、静脈系が主体であり、虚血モデルの評価の際に必要な中大脳動脈については分離同定が困難であった。今回の検討ではMRAngiograpnhyの撮影系列が固定されており、頭部撮影用コイルも未使用であるため、信号/雑音比の改善が得られていないと思われる。また、MRI装置の静磁場強度は0.3Teslaであるが、1.0Teslaの場合にはWillis輪も含め、ラットの脳動脈系が良好に描出されている過去の実験結果があることから、今後の虚血脳の実験にあたって、MRI装置部分に改良を加える必要があると思われた。
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