平成22年度の本研究目的として、一体型PET-MR装置による脳エネルギー代謝測定の確立を目指し、最も基本的な150ガス吸入によるPET脳循環酸素代謝定量測定とMRI同時撮像による解剖学的局所部位同定に向けた実験を施行した。^<15>Oガス定常吸入法は、臨床的に確立された方法として脳血流量、脳酸素消費量、脳酸素摂取率、脳血液量が定量的に算出可能であるが、本方法をラットなどの小動物実験に応用し、断層像として解析した報告はない。われわれは正常Sprauge-Dawleyラット(第8週齢、約250g)に対し、一体型PET-MR装置を用いた脳循環酸素代謝測定を試みた。ラット6匹にドルミカムおよびセラクタールによる筋注麻酔後、一側の大腿動脈にカニュレーションを施行し、さらに気管を切開しチューブを挿入して^<15>Oガス供給ラインに接続した。PET-MR装置にラットを固定後、C^<15>Oガス、C^<15>O_2ガス、O_2ガスの順に吸入を行った。各ガス吸入は直前のガス吸入による残存放射能の減衰を経てから行った。その結果、C^<15>O_2ガスおよびO_2ガス吸入は、それぞれ50MBq/minおよび500MBq/minの投与量に設定し、7分間吸入すると脳内分布が定常状態になることが判明した。7分間吸入後に6分間のPET撮影を行い、並行してMRI撮影も施行した結果、C^<15>O_2ガス、O_2ガスはともに良好に脳内に分布した。一方、C^<15>Oガスの脳内分布は非常に低く、バックグラウンドレベルであった。MRIの同時撮影により、大脳、小脳、脳幹部の放射能分布の断層像による解剖学的な同定が可能であった。PET撮像中に動脈血採血を行い、入力関数としてのウェルカウンタでの放射能測定や血液ガス値の測定が可能であった。今後は脳血流量や脳酸素消費量の正常値測定法を検証し、虚血脳におけるMRAを含む膿画像とPET画像の同時測定へ応用を行う予定である。
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