平成23年度の研究では、前年度に確立した一体型PET-MRI装置による^<15>Oガス吸入法を用いた脳循環酸素代謝測定により、小動物の脳血流量、脳酸素消費量、脳酸素摂取率の正常値測定を行い、加えて虚血脳における脳循環酸素代謝測定の可能性について検討した。正常値測定では、健常なSprauge-Dawleyラット(第8週齢、約250g)を用いて、steady-state法に基づいた脳血流量、脳酸素消費量、脳酸素摂取率の測定を行った。その結果、臨床用PET装置で同様の測定をした場合と比較して脳血流量値は良く一致したが、脳酸素消費量や脳酸素摂取率では一体型PET-MRI装置で高値となる傾向がみられた。続いて、同種のラットに対し、一側性内頚動脈閉塞モデルを作成し、虚血90分後に再灌流を行い、一体型PET-MR装置による脳循環酸素代謝を行った。神経徴候の重篤なラットでは虚血域に一致する脳血流量や脳酸素消費量の低下が同時撮像したMRI画像を参照することにより判定可能であった。さらに、同じモデルによるラット脳虚血発生4日後に^<11>C-DPA713を6MBq静注し、活性化ミクログリアの脳画像撮像を施行した結果、MRI画像との融合画像から虚血周辺域への集積が同定可能であった。MR Angiography (MRA)による脳底部主幹動脈の描出について様々な至適撮像条件を検討したが、頚部内頚動脈より末梢の血管系の描出は不良であり、ラット脳虚血モデルにおける同時評価は困難であった。 以上、平成23年度の研究成果として、脳虚血の病態に関するPETとMRIの情報が一体型PET-MRI装置を用いることにより同時間軸で評価可能であることが示された。また、様々なPET製剤の脳内分布測定や定量測定において、MRIとの融合画像が解剖学的な部位の同定に有用であり、解析を容易にすることが明らかとなった。
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