スペクト複合撮像システムの虚血性心疾患診断への応用における各種画像処理の有用性を検討した。各種補正法の有用性に関しては、コリメータ開口径補正による空間分解能補正が冠動脈病変診断において感度を向上させることを明らかとした。しかし、特異度は低下するので、補正なし像も同時に読影する必要があった。これを改善するためには減弱補正等の補正も同時に施行することが望ましいことが示唆された。また、心電同期で収集した各時相の投影データを非線形変形により、拡張期投影データを作成する方法を前年開発した。この拡張末期変換投影像を用いると、虚血診断において各種補正で生じる前壁心尖部の特異度の低下を改善できることが示唆された。さらに、減弱補正、散乱線補正および空間分解能補正を加えることで絶対値評価が可能となる基礎的検討を行ったが、臨床への応用はできなかった。臨床応用としては、投与前後の投与量とクロスキャリブレーションファクターを用い、心筋負荷時の局所心筋摂取率が最適と考えられる。^<99m>Tc製剤を使用すれば負荷時および安静時の摂取率の比は、冠循環予備能の指標としての有用性が示唆される。今後、全ての補正を加えた画像における虚血性心疾患の診断能の向上を検討し、これに絶対値評価である心筋摂取率を加えることで診断能がさらに向上するか検討する。また、拡張末期変換投影像の作成法をスライスデータに応用し、冠動脈CT血管造影像との融合画像作成への応用も試みる。
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