研究課題
統合失調症の治療薬である抗精神病薬の主要な作用は主に後シナプスに存在するドーパミンD_2レセプターの遮断作用であるが、抗精神病薬がシナプス前機能に及ぼす影響についてはあまり検討されていない。本研究では、従来から臨床で用いられているドーパミンD_2レセプターのアンタゴニスト(遮断薬)である抗精神病薬および近年臨床で用いられ始めた部分アゴニスト(作動薬)である抗精神病薬を用いて、抗精神病薬がシナプス前機能であるドーパミン生成能に与える影響を健常人においてPET(positron emission tomography)測定により明らかにする。本年度は、ドーパミンD_2レセプターのアンタゴニストである抗精神病薬による脳内ドーパミン生成能変化およびドーパミンD_2レセプター占有率を検討するべくPET検査を施行した。21~29才の健常男性志願者12名を対象に、抗精神病薬のリスペリドンの服薬前および服薬後の2日間でトレーサーとして[^<11>C]DOPAおよび[^<11>C]racloprideを用いたPET検査を行い、服薬前および服薬後の線条体におけるドーパミン生成能とドーパミンD_2レセプター結合能を測定した。服薬による脳内ドーパミン生成能変化率とドーパミンD_2レセプター占有率との間に明らかな相関はみとめられなかったが、服薬前の脳内ドーパミン生成能と服薬による脳内ドーパミン生成能変化率との間には有意な負の相関がみられ、脳内ドーパミン生成能が服薬により一定値に収束する傾向がみられた。これはリスペリドンに脳内ドーパミン生成能を安定化させる作用があることを示唆するものであり、統合失調症における治療効果発現に関与している可能性がある。
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