研究課題
統合失調症の治療薬である抗精神病薬の主な作用は後シナプスに存在するドーパミンD_2レセプターの遮断作用である。本研究では、ドーパミンD_2レセプターのアンタゴニスト(遮断薬)である抗精神病薬のリスペリドンおよび部分アゴニスト(作動薬)である抗精神病薬のアリピプラゾールを用いて、抗精神病薬が前シナプス機能であるドーパミン生成能に与える影響を健常人においてPET(positron emission tomography)により測定した。今年度は、昨年度に着手した、アリピプラゾールによる脳内ドーパミン生成能変化およびドーパミンD_2レセプター占有率の測定について引き続きデータ解析を行い、平成21年度に施行した、リスペリドンによる脳内ドーパミン生成能変化およびドーパミンD_2レセプター占有率の検討結果と合わせ、抗精神病薬による脳内ドーパミン生成能変化およびドーパミンD_2レセプター占有率の相互関係を、ドーパミンD_2レセプターのアンタゴニストである抗精神病薬とアゴニストである抗精神病薬との間で比較検討した。リスペリドン、アリピプラゾール共に服薬による脳内ドーパミン生成能変化率とドーパミンD_2レセプター占有率との間に明らかな相関はみとめられなかったが、服薬前の脳内ドーパミン生成能と服薬による脳内ドーパミン生成能変化率との間には有意な負の相関がみられ、脳内ドーパミン生成能が服薬により一定値に収束する傾向がみられた。また、脳内ドーパミン生成能が一定値に収束する傾向は、アリピプラゾールよりもリスペリドンでより顕著であった。これらの結果は、ドーパミンD_2レセプターのアンタゴニストおよび部分アゴニストである抗精神病薬共に脳内ドーパミン生成能を安定化させる作用があることを示すものであり、抗精神病薬が前シナプス機能に及ぼす影響も統合失調症における治療効果発現のメカニズムに関与している可能性が示唆された。
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