平成22年度は、平成21年度に引き続き、動脈瘤モデル作成の至適条件の検討・設定に費やした。 【方法】ビーグル成犬(雄)を使用。外腸骨動脈に留置したダブルバルーンカテーテルによって作成した閉鎖空間にエラスターゼ(2ml)を注入し、30分間放置して血管壁をエラスターゼに曝露させた。 (1)エラスターゼ曝露前に血管内皮を損傷することを目的として施行する、バルーンカテーテルによる血管拡張法の至適条件について検討した。 (a)対象血管径に対して、径の12倍から2倍の径を有するバルーンカテーテルを用いて血管拡張を施行 (b)上記(a)の結果を基に、対象血管径に対し至適と思われるサイズのバルーンカテーテルを用いて、血管拡張回数の違いによる動脈壁への影響を検討 (2)血管拡張およびエラスターゼ曝露後の経過観察期間による動脈拡張程度の違いを検討した。 【結果】 (1) (a)対象血管径に対し、1.5倍までの径のバルーンカテーテルでは対象血管の硫裂等の有害事象を1例も認めなかったのに対し、1.6倍以上の径では有害事象の発生を経験した。 (b)バルーンカテーテルでの血管拡張は、単回よりも複数回の方が、より広い範囲で血管内皮の損傷を認めた。 拡張回数は6回程度で対象血管のほぼ全周で血管内皮の損傷が認められた。 (2)経過観察期間1ヶ月、3ヶ月の比較では、血管拡張程度に多少の差を認めたが、統計的有意差は認めなかった。 【結論】以上から、次のことを明らかにした。 (1) (a)対象血管の拡張に用いるバルーンカテーテルの至適サイズは、血管径の1.5倍。 (b)血管内皮損傷を全周性に生ぜしめるためには、バルーンカテーテルでの血管拡張は6回以上必要。♂ (2)動脈瘤形成のための経過観察期間は最低1ヶ月。
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